コレクター
「ほう。妖怪、ですか。」
確かめるように繰り返した黒衣の法師に、やつれた初老の男は眉根を寄せながら頷いた。
「ええ……もう五人も喰われとるんです。」
「名主さん。妖怪って言うからには、何か理由があるんだろ?人の所為とは思えないような、さ。」
声のするほうへ向けば、少し気の強そうな、白い巨骨を背負っていること以外は村娘と変わりない少女が立っている。名主は、また頷いた。
「…それが……頭が、ないんですよ。それに腹わたもごっそり…」
「うえ〜。気持ち悪いのじゃ……。」
「ま、それじゃあ妖怪に決まりよね…。」
軽く相槌を打つ風変わりな様相の少女と可愛らしい子狐を、しばし目を丸くして見つめたものの、すぐに慌てて用件を言った。
「そういうわけですので、是非、退治していただきたいのです。どうぞよろしくお願いいたします。」
ぺこりと下げられた頭を、ただ一人、白銀の髪をした少年だけが鬱陶しそうに見やった。
「ったくよー、俺たちそんなにヒマじゃねーんだぜ?四魂のかけらの気配がするわけでもねーのによ……」
「もう、犬夜叉。またそんなこと言ってるー。」
「いつもかごめが言っとるじゃろ、人助けじゃ、人助けっ。」
「だーかーら、その人助けが馬鹿らしいって……」
「馬鹿らしくないわよー、今までだって人助けの中でかけらを集めてきたんじゃない。」
「そのせいで足すくわれたことも一度や二度じゃねーけどな。」
「……。あ、弥勒さま達、遅いわねえ。」
「かごめ、説得を諦めおったな。……弥勒たちなら、聞き込みじゃと言っておったから、それなりに時間がかかるんじゃろ。」
「そうねえ。なにか手がかり、見つかるかしら……。」
「へん、聞き込みなんかどーでもいいんだよ。現れた相手をぶった斬るまでだ。」
「そういえば、今宵は望月じゃのー…。」
与えられた部屋の中は、いつものように和んでいた。
「ふむ。頭だけが持ち去られてますな。」
「って言っても、こんな骨じゃなんにも分かりゃしないけどね。」
掘り起こした土まみれの骨を調べながら、ほとんど和やかといっても良い雰囲気で喋る。
「はあ…すいません、何しろ首なしで穴の開いた死体なんて、気味が悪くて……」
「すぐ埋めちゃったわけか。」
「何か、気がかりなことなどはありませんか?死体の様子とか……」
「し、死体ですか…そうですねえ、首がすっぱり斬れているだけで、他には特に印象的なことは何も……。ただ、満月の夜だけに現れるというだけで……。」
困ったように視線を漂わせる名主を少し見てからためいきを一つついて、珊瑚は後ろに立っている法師を振り返った。
「それであたしらのことをあんなに急いで呼び止めてたってわけか…満月は今夜だ。どうする、法師さま?」
「とりあえず、犬夜叉たちのところへ戻りましょう。その満月好きな妖怪は、通例どおりなら今夜現れるのですから、夜に向けて策を練るのが一番です。」
「そうだね。」
軽く会釈をし、貸し出された離れのある方向へ歩き出しかけた二人を、名主が思い出したように呼び止めた。
「あの、退治屋殿。」
「なに?何か、思い出した?」
名主は、少しためらいながらも、話を切り出した。
「……今夜、気をつけた方がよろしいですよ。」
予想外の言葉に、弥勒も珊瑚もきょとんと目を丸くする。
「…はあ?どういう……」
「いえ、男女の差ならともかく、外見などを妖怪が選り好むはずがないと思って黙っていたんですが……今まで狙われた娘がね、みんなして同じような容姿をしていたんですよ。」
「容姿…ですか?」
「ええ。腰ほどまである黒髪を背で結って、器量がよくて…ちょうど、退治屋殿のような。」
ずいぶん贅沢な輩だな、などとぼんやり思った弥勒だが、すぐに打ち消す。
実際、器量ならともかく、髪型まで指定する妖怪など聞いた事もない。
「大丈夫ですよ。単なる偶然でしょう。」
「そうそう、万が一襲われたって、妖怪なんか返り討ちにしてやるんだから。」
本当に出来るのだからこの娘は怖い、と、弥勒は心底思ったそうだ。
それでも心配そうにする名主を残し、二人は戻っていった…。
「いや、皆様方、そろいもそろってお美しい!」
声に少なからず喜びの感情が入り混じっている。
それが嫌でもはっきりと分かったので、珊瑚は心の底から不愉快そうに法師を睨んだ。
とりあえず、随時だれかが外を見回っていれば大丈夫であろう。それが、話し合いにより出た一行の結論であった。
死体が綺麗に骨になっていないあたり、恐らく相手は単独である。選り好みした挙句、美味いところだけを食べて事足りるらしいのだから、大して大きくもないだろう。
そういうことで、かごめを除いたメンバー全員が、一人ずつ順番に見回ることにしたのである。念のため、危なくなったときに助けを呼べるよう、全員が七宝の化けドングリを持つ。衝撃を受けると増殖して拾った者が辿りつけるように、七宝が妖術をかけたものだ。
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これは確か「探偵学園Q」を読んでてものすごく書きたくなって書いた気がする。あれです、メグがさらわれて殺人ビデオの収録現場に連れて行かれたやつ。知らない方には申し訳ないのですが…とにかくあれを珊瑚でやりたかったんです。……自分で言ってはなんなのですが…悪趣味(汗)。
泣いてる珊瑚ちゃんも大好き(いい加減にやめとけ)
ちなみに言うとこの後の展開は前に述べたQの話と「魔探偵ロキ」第一話をごちゃまぜにしたような(だから仮タイトルが”コレクター”だったりして)内容。ロキも好きー。